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「英語の授業は英語で」―新学習指導要領案(高校)に思うこと [外国語教育]

昨年末に話題になりましたが、新しい高等学校学習指導要領案のなかにこんな一節が現れました。

英語に関する各科目については,その特質にかんがみ,生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とするため,授業は英語で行うことを基本とする。(出典:文科省HP http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/news/081223/002.pdf

で、一部の報道によると、これはかなりの賛否両論を呼んでいるとかいないとか。「理解度に差があり英語で授業は無理」「苦手な生徒がますます英語から離れていく」「大学入試の英文は日本語で説明しなくては時間のロス」などなど、現場のセンセイたちの困惑(と反発?)の声を紹介していました。

さて、この問題、様々な視点から議論は可能だと思いますが、私個人としては、今回のハナシの1つの大きなポイントは、「言語材料を教授(学習)する場としての授業」という考え方ではなく「目標言語の使用経験を積む場所としての授業」という考え方を、語学授業の基本コンセプトとして(今まで以上に明確に)突きつけてきた、ということなのではないかと思っています。

だとすれば、文科省のいう「コミュニケーション」を念頭に置いた英語の授業は(可能な限り)英語で行うのが望ましいと思いますし、むしろそうあるべきだと、私は考えます。

このブログで前にも指摘しましたが、英語で授業を受けるということは、ひとつの(限定された意味にはなりますが)authenticな、つまり、彼らの学校生活に根ざしたプラクティカルな目的のある英語使用経験であり、これを週3~4時間程度(年間120~160時間ぐらいにはなるでしょうか)であっても持たせてやることは、ここ日本において学習者が英語を「使う」機会が皆無である以上、非常に大切なことであると思うのです。授業時間が、その言語を使う(わなくてはいけない)状況としての役割を果たすということなのです。

ただ、ここで、間違えてはいけないのは、この「使用経験」は、無条件に言語材料の「学習」につながるわけではないし、「定着」につながるわけでもないということです。

個々の語学教師が相手にする学習者は様々で、それこそ、「bとdの区別がつかない」からnear-nativeレベルまでいるわけで、その点、文科省も当然バカではないので、

「生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮するものとする」(文科省HP)

と但し書きを付け、「どの程度、英語で授業するかは現場の判断に任せる」(毎日新聞、12月22日)としています。

つまり、「是が非でもAll Englishの授業」と言っているわけではなく、どういう授業をデザインするかは結局のところ、実際の学習者を前にした語学教師がアタマを使って考えなさい、ということなのだと(私は)思います。

英語だけで教える授業はいきなりやっても成立しません。そんなことは当たり前なのです。最終的な目標を「授業時間をコミュニケーションの場とする」なら、そこにいたるまでは効果的に母語を使用しながら、授業のなかで、その目標を達成する素地作りを年度の初めから計画的に行う必要があるのです。

具体的にいえば、将来的に活動指示を英語で出しかつスムーズに活動を展開したいなら、その指示のバリエーションをしっかりと教え込まなくてはいけない。(英語で展開される)授業の中で使う表現や文法等は事前にしっかりと教え込んでおかなくてはいけない。また、生徒が教師の質問に適切に応答するためには、基本的な問答パターンのドリル練習も必要だし、適切に発音するためには、発音の知識、言語材料の音読練習は欠かせません。

結局、「教授(学習)する場」としての授業と「使用経験を積む場」としてのそれは決して相反するものではなく、お互いを補完するものと考えるべきで、言語材料についての「教授(学習)」(これは日本語でも構わない)を全体の授業設計の中にうまく織り込みつつ、授業中に行われる教師と生徒、生徒同士の英語によるやり取りという「使用経験」が「定着」に貢献するような仕掛けを年間計画のなかで作ることが肝要だ、ということなのでしょう。

まあ、冷静に考えてみると、こんなことは、教えるプロとして必要不可欠な授業デザイン力の基本的な部分であって、これが出来ないということは「教師としての技量と見識がない」ということに等しいことになるのではないでしょうか。

今回の学習指導要領は、「英語で授業をする力」云々と同時に、これまで(無批判に)言語材料の教授のみに終始してきた語学教師の「授業力」を問うているようにも見えてなりません。

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